第一展示室 柴田健治
展
柴田氏は古典絵画にみられるような平滑で光沢のある画面にこだわった、モノクロームの絵画を十数年来継続的に制作している。
当初は、よりフラットで張りつめた画面を得るために木製パネルに水張りした水彩紙(アルシュ)を支持体に油彩で描いていたが、近作ではキャンバスを用いたものも加わり、作品の大きさに制約が無くなったことでさらなる魅力が引き出されている。
画面と対峙して先ず目を引くのは、やはり「色」の美しさだが一般に物体の持つ「色」というのは光の反射を知覚することで認識されるものであり、そういった意味で柴田氏は画面の中に独自の光を獲得し(閉じこめ)コントロールすることに成功している。鑑賞者はおそらく作品を前にして光の恩恵を感じ、新しい光(色)を享受することになるだろう。
作品が展示室の各壁面に静謐さと緊張感を保つよう丁寧に配置されることでその空間は大きく変容する。あたかも初めて訪れる場所に導かれるかのように。描かれているのは、色=光?
画面の中に現れる、奥行き、距離、時間… 鑑賞者は自身の様々な記憶をたどり、ある種のイリュージョンに到達するのだろうか。
※柴田氏は1997年の個展以来、東京を中心に個展やグループ展で発表を続け、東京都現代美術館のアニュアル2002「フィクション?」への選出や、2010年ドイツのケルンで開催されたアートフェア「アートコロン」では個展形式の展示を行うなど着実に評価を得ている。
当館では2007年に行われた企画展「アテンプト」(O JUN氏によるキュレーション)に出展後、数回のグループ展に参加、今回は初めての個展となる。
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