若江漢字 展 
キリスト教絵画の試み


2012年4月1日(日)〜6月10日(日)

A.M.10:00-P.M.6:00(入館はP.M.5:30まで)
毎週:月・火休館

入館料/通常料金 500円

助 成 : 公益財団法人 花王芸術・科学財団


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●アーティスト・トークを開催 6月2日(土)14:30〜
 ※参加自由
 作家自ら作品について詳しく解説いたします。



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※ブログをはじめました。美術館からのお知らせや日々の様子をお伝えします。

第一展示室  

若江漢字
キリスト教絵画の試み


 若江漢字は1960年代後半より美術家として発表を続け、これまでに写真を使用し「視覚」の問題を哲学的に問うコンセプチュアルな作品や政治、経済、環境問題等を含む社会的なテーマを扱ったインスタレーションなどを数多く手掛けて来た。
 今展では2007年より制作の中心となっている絵画作品の中からキリスト教、旧・新約聖書を独自の視点と解釈によって現代絵画とした最近作を中心に展観する。

 昨今、日本のアートシーンでは「絵画」が再注目され、多くの展覧会も開催されている。しかし、 絵画の主たる目的が「表現すること」そのものとなった現代、「何を描くか?」あるいは「何のために描くか?」といった事柄はうやむやにされ、「心地よさ」や「奇抜さ」といった嗜好性に左右される極めて感覚的な評価のみでその価値が問われる傾向にあり、それは現状において概ね了解されているものの、その反面、感覚的な判断基準で選抜された作品のみで満足しきれない要求というものも現実としてある。それが「仏教美術」やリアリティを追求する「写実絵画」などへの関心として現れている。

 今展で若江漢字はあえて旧・新約聖書から6つの場面を取り上げ、現代絵画表現によるキリスト教絵画を試みている。これまで宗教的な問題についても作品化して来た若江氏にとって聖書をモチーフにすることはある意味自然なことではあるが、これは同時に現状の絵画表現の在り方を問い直す試みでもある。
 すでに多くのアーティストが繰り返し作品化して来た聖書の場面をテーマに描くことは、時世を問わず同じテーマを持つ全ての絵画と同列に扱われれることを意味し、「心地よさ」や「奇抜さ」を求める現行の感覚的な判断基準や現代美術の土俵でのみ評価されることを拒むものである。それはかつてアートの前衛にいたポスト印象派のゴーギャンやシュルレアリスムのダリらが、大多数の人の興味が大衆文化に向かう中、あえて自身の作品に宗教的なテーマを取り込み、新しい表現を示すことによって様式の枠を超えてルネサンスの数々の名作に果敢に挑んだ姿勢とも重なる。


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