滝沢広 「オブジェに指紋」
HIROSHI TAKIZAWA ”Fingerprinted Objects”

2021年4月3日(土)〜6月20日(日)
A.M.10:00-P.M6:00(入館はP.M.5:30まで)
毎週:月・火・水曜休館
5月3日、4日、5日は開館いたします。


入館料/一般700円、学生600円(小学生400円)


当館では現在、国、県からの要請を遵守し、新型コロナウイルスの感染拡大防止策を講じた上で平常通り開館しております
■新型コロナウイルス感染拡大防止のため、会期等が変更となる場合がございます。詳細につきましては、美術館までお問い合わせください。

※作家在館予定:6月10日、20日


滝沢さんが出演された4月22日放送のテレビ朝日『アルスくんとテクネちゃん』のインタビュー記事が公式HPで公開されております。
https://post.tv-asahi.co.jp/mirai/post-150088/



※ブログをはじめました。美術館からのお知らせや日々の様子をお伝えします。

第一展示室
滝沢 広 「オブジェに指紋」

触知という言葉がある。
ものに触れることでその存在を感知することを意味する。

写真はオブジェになりうるのか。
決して触れることのできないイマージュを掴むように握られた手によってできた指紋の形跡。
触れようと近づき、見るために離れる。その周囲との間合い(距離もしくは隔たり)を彷徨いながら制作をしている。
イマージュが立ち上がってくる瞬間を私は待っている。

滝沢 広 

©MUSEUM HAUS KASUYA  

 滝沢広は大学で心理学を専攻した後、写真を用いた様々な表現で作品を制作し続けている。
「物質」を写真(映像)で捉えることによってイメージの世界に引き込み、イメージ化された像を再構成し、新たな支持体に定着させることでイメージと物質の境界を往来するように独自の世界を構築している。その作品は「New Photographic Objects 写真と映像の物質性」埼玉県立近代美術館(2020年)に選出されるなど、近年注目を集めている。

 本展で滝沢は古くから立体的なイメージを記録する媒体の一つとして用いられる粘土を可塑性のある物質として捉え、指紋採取のために使用している。イメージをつかむ様に粘土を握り圧を掛けることで指紋を採取する。その結果として何か意図されたオブジェのような形状を現す粘土。本来、可塑性を持つ粘土はブロンズ等に置き換えられ、不可逆的な立体造形として残されるが、滝沢はそれらの造形を写真によって記録し、インクジェットプリントの平面の上に定着させ”Fingerprinted Objects”のシリーズを作品化している。(物質からイメージへの変換)
 ”Fingerprinted Objects”での「指紋」は観覧者に様々な意味を想起させる。現在、デジタル機器のセキュリティとしても使用される「指紋」は個人を特定するアイテムであり、ものに触れたことの事実を証明するものでもあり、容易に固有性を示し、オリジナルの形状として揺るぎ無いものにする。その一方で粘土上に残された指紋は、指の形状を反転させた写真で言うところのネガであり、三次元の鏡像であるとも言える。あるいは、指紋はDNAとは違い実態ではなく影なのだろうか…

 今回、“Fingerprinted objects” のシリーズとは別に制作された動画作品”Late Visitors”では三次元を二次元に変換しつつ、これまで写真作品で追求してきた「物質」と「イメージ」の関係に「時間」という空間の要素が加わることでさらなる広がりがもたらされ、捉えられる「イメージ」も瞬間ではなく一つの現象として記録されている。実態と現象が同じ時間の空間でせめぎ合いながらイマジネーションによるストーリーを完成させている。

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