四人の仕事はその精度において見ることの手応えを深くさせるものであるが、いつもどこかに必ず瑕や澱があって、つまり、手と頭の間で激しく一戦あったことを物語っている。"見るように描けない、触れるように見ることができない"。世界は彼ら(=僕たち)にたくさんの不都合を与えてなかなか勝手を許してくれないが、そう思ったとたんに世界は彼らに向けてお仕置きの矢を雨霰と降らせるのだ。しかし"世界の不都合"とは、実は彼ら自身(=僕たち)であったことを思い出せば矢はたちどころに降り止んで、また仕事に精を出す。それは人間の精神の尾根とも言うべきうす暗く堅く狭い冷えた土地での営為であって、無慈悲な土地で黙々と仕事に精を出す彼らの手は、しかし決して重くはなく、まるで遊んでいるかのように楽しげだ。ただ幾度かあった手と頭の間の攻防の名残として、たとえば印画紙の底に沈む微かな筆の重ねであったり、たとえば石の肌理をえぐる震える鑿跡だったり、たとえば夥しく濡れて張りつめた面に不意に浮かび上がる耀変模様であったり、たとえば完璧に仕上げられた塗装に一点、地金が覘くほど執拗に削りつけられたキズであったり、印しは絶え間なく繰り返し打たれる。それは、世界は反省したり学習したり希望をもったりするものではなく、その都度反応することが肝心で、彼らの四つの存在物は彼らの反応の良さと精度の高さを証している。彼らの仕事が活き活きと艶がある所以である。
O JUN:画家(本展、キュレーション) |